公益社団法人空気調和・衛生工学会 住宅設備委員会
住宅設備のBIM活用検討小委員会
委員会成果報告書 住宅設備のBIM活用検討
第3章 住宅設備でのBIM活用ガイドラインのあり方
- 3.2 業務モデル
- 3.2.5 BIM業務の普及促進・ユーザビリティ向上環境の整備
- 現在、BIMによる業務は、BIMソフトの専用機能を使用し2D図面を作成する事に主眼が置かれ、本来のBIMの機能、設計手法が使われているとは言えない。また、BIMの導入には、導入コスト、BIMソフトの操作、BIMの概念の理解不足など様々な障害がある。本ガイドラインでは、BIMの導入のための指針を示し、さらにBIMによる業務環境の向上や本学会としてBIM教育環境を整備しBIMの普及促進を促すための準備を行う。
- (1)BIMソフトに求められる機能
- 現在、様々なBIMソフトが存在するが、海外製のものが多い。建築設備においては、海外製のものは、日本の国内事情に対応していないケースが多く、また、国産の設備設計専用BIMソフトの場合、情報技術へのアクセス機能やユーザー開発機能が不足している場合が多い。本ガイドラインでは、BIMソフトとして必要な機能を示し、将来的に本来あるべきBIM業務に必要なBIMソフトに必要な機能を示す。
- a.クラスによるデータ構造の標準化
- BIMソフトは、様々なBIM素材をオブジェクト指向によって属性情報を扱っているが、様々な要素をクラスという概念で構成されている。クラスという概念は、オブジェクト指向におけるプログラムの手法であると同時に、様々な区分に活用できるため、本ガイドラインでは、BIMにおける設備業務を本学会におけるFC(Foundation Class)として定義することから、各BIMソフトによって本ガイドラインにおけるクラス区分を定義しデータ交換を円滑にできることが望ましい。
- b.専用機能による実務の生産性向上
- 我が国における建築設備設計は、海外と異なる技術体系と業務習慣が有る。国産のBIMソフトは随時機能向上が図られているが、本ガイドラインにおいては、特に、海外製のBIMソフトにおいて国内の設計事情に適した設計業務の生産性を向上できる専用機能を実装するための指針を示す。
- c.情報技術によるデータのシームレス化
- 外部データベースとの接続、直接インターネットへの接続によるデータ交換をBIMソフト開発ベンダーに留まらず、物件に関わる総てのメンバー、或いは、資機材メーカーとBIM素材の取得、確認申請の自動審査機関への接続が可能な機能の実装が求められる。また、大規模集合住宅や広域の団地をBIMで設計する場合には、クラウド業務環境においてIFCによるファイル共有や、各BIMソフトが実装している内部・外部開発環境によるソフトウェアがBIMデータにシームレスにアクセス出来ることが重要である。
- d.ユーザー開発環境による業務の自動化
- 物件特有の機能をユーザーが開発し、BIMソフトに標準実装されていない機能を追加するために、作業の自動化、生産性の向上を図るために必要となる。特に画一化されたプランが有る場合には、設計業務の生産性を飛躍的に向上することができる。
- e.共同作業のマネージメント機能
- 建築設計の業務は、意匠、構造、設備と複数の分野、或いは特定分野についても複数メンバーによって行われることが多い。BIMによる業務においても当然、その業務環境に対応することが求められる。本ガイドラインにおいては、BIM素材、データ交換、外部参照、テンプレート配布など、共同作業のマネージメントに必要な機能を示す。
- (2)BIMマネージメントシステムの整備
- BIMマネージメントシステムとは、BIMによる業務を円滑にサポートするための仕組み作りといえる。現在、BIMによる業務の現状として、BIMソフトの専用機能を使用して、現在の2D図面の作図を行うことに主眼が行われているが、BIMの本来の業務の在り方を支援するものである。
- a.BIM業務メンバーの照会とマッチング
- BIMによる実務は、従来のCADとは異なり、専門性が要求される。BIM実務を適切に行うためには、実務の内容に合わせて適切なメンバーを選定する必要が有り、その情報を照会できる仕組みが必要である。
- b.BIM業務共通規約とBIM素材の配信
- BIMの業務においては、全メンバーが統一されたプロトコールによって行われる必要がある。従って共通規約に沿った各BIMソフトによって使用される書式を設定するためのテンプレートを容易に入手できる仕組みが必要であり、今回のガイドラインにおいては、本学会における共通規約の提案を行う。
- c.BIM業務のための情報通信環境の提供
- BIM業務のための環境を構築するためには、大規模事業者においては独自の環境を構築することが可能であるが、BIM業務の普及促進のためには、中小の物件においては、技術的、コスト的に負荷が大きいため、第三者によって提供できる仕組みを構築することが必要となる。
- (3)BIM教育環境の整備
- 現在、本来のBIMによる業務が普及しているとは言えない現状が有る。その原因は、BIM実務に参画するメンバーのBIMスキル不足、BIM業務環境の構築に係るスキル、BIM業務全体をマネージメントするスキル不足であり、そのスキルモデルを業務環境の変化に対応するために、バージョンアップを行いながら標準化し、その内容をBIM業務に参画するメンバーがスキルを取得する必要がある。
- a.メンバーのBIMスキルの向上
- 現在、BIM業務は従来の2DCADよりも建築設備、住宅設備に対する専門性が要求されるが、今後、本格的な普及促進が見込まれ。BIMによる業務スタイルやBIMソフトの操作スキルの取得を推進すると同時に、今後、BIM業務が発展していくにつれて、新たなスキルが要求されてくることに対応した教育環境を整える必要があるため、標準化された教育カリキュラムが必要となる。 BIM入力作業に携わる専門知識としては、建築プランや法規に関する基礎的知識、系統に関する知識、住宅設備の機器・器具類の商品知識、配管・ダクトの基本的材料知識、設備資機材の納まりや支持の基礎知識が必要となる。
- b.BIM業務環境構築のための指導
- BIM業務を円滑に行うには、その業務環境を構築する必要があるため、推薦できる業務環境をモデル化して標準化を図り各事業者が採用できる指導を行うか、その環境を提供することがBIM業務を適正に運用することができるため、物件に適した教育環境を、本ガイドラインによって示す。
- c.BIM業務監督のマネージメント指針普及
- BIMによる業務は、様々な情報管理、データ管理、工程間データ交換があり、各設計分野において統一の取れた業務環境が必要となるため、物件の設計業務全体をマネージメントすることが必要となる。本ガイドラインは、住宅設備設計における総合設計マネージメントをモデル化して、その普及促進を図るための教育環境を整える準備となる。