公益社団法人空気調和・衛生工学会 住宅設備委員会
住宅設備のBIM活用検討小委員会
委員会成果報告書 住宅設備のBIM活用検討
第3章 住宅設備でのBIM活用ガイドラインのあり方
- 3.2 業務モデル
- 3.2.4 BIM業務に参画するメンバーの業務と組織化
- BIMによる業務は、位置情報の概念を含むBIMソフト空間に図形データに属性情報に参画するため、業務に参画するメンバーは、参画する業務内容に適したスキルが必要となり、これまでの2DCADオペレーターと異なり下記の業務に関する技能の習得が必要となる。
- (1)BIM業務に参画するメンバーの実務スキル
- BIMによる業務は、位置情報の概念を含むBIMソフト空間に図形データに属性情報に参画するため、業務に参画するメンバーは、参画する業務内容に適したスキルが必要となる。特に建築設備の基本的な知識、住宅設備における商品知識が必要となり、これまでの2DCADオペレーターと異なり下記の業務に関する技能の習得が必要となる。加えて4、実務スキル習得のための教育環境が有ることが望ましい。
- a.BIMソフトへのデータ入力実務
- BIMソフトへのデータ入力実務とは、BIMソフトにおける空間属性、BIM素材の仕様などオブジェクトの意味を理解しや上でBIM素材を配置する必要がある。そのためには、これを理解できるBIMソフトオペレータメンバーが必要となる。
- b.BIMソフトによる設計実務
- BIMによる設計実務とは、対象建物の負荷を算定し、系統を決め資機材を選定し、そのオブジェクトデータをBIMソフトの空間に配置することであるため、前項aのスキルに加え、設備技術者としての能力を有すると同時に、情報技術によるデータ管理業務の能力が必要となる。但し、複数のメンバーが設計業務に参加する場合には、必要に応じて役割分担ができる。
- c.BIMソフトによる維持管理実務
- BIMソフトにおいては、BIMデータを活かして外部データベースと接続し監理業務を行う機能を実装している製品が有る。その場合には、クライアントを介して、維持管理事業者と情報共有を行い、BIMにおける様々なデータを活かせるようにすると対象施設の運用を効率化することが可能となる。
- d.BIMソフトと外部システムによるによるBIMデータ活用実務
- 外部データベースに加え、インターネットを介したクラウドシステムと接続することにより、更に高度な機能を持つ維持管理システムやCFD、負荷計算、省エネ評価システムなどとシームレスに業務を行うことができる。
- e.BIM業務を総合的・統括的に活用できる監理実務
- BIMによる設計業務は、メンバー間、工程間の情報共有を図ると同時に、クライアント事業者にとって物件情報・資産評価・施設管理などの業務への活用に活かすものである。従って、BIM業務においては、それぞれの業務のステージにおいて物件の事業趣旨に資するために適正な監理のためにリーダー的な役割を担うメンバーが必要となる。これには、BIM設計実務における個別現場を監理する現場リーダー、全ての設計現場を監理するネットワークリーダー、BIM設計の事業的管理を行う経営リーダーが必要となる。
- 現場リーダー
- BIMによる設計においては、情報やデータの書式や取扱う仕様の標準化が必要となる。従って作業の現場では、BIMソフトにおいて共有のテンプレートが必要になるためその作成や配布、使用状況の確認を行い、設計趣旨に沿ったBIMデータの作成が適正に行われているかの監理を行うリーダーが必要となる。
- ネットワークリーダー
- 設計業務環境は複数にまたがっているが、BIMによる設計は情報共有やデータ交換が頻繁に行われるため、組織的に円滑なネットワーク化が必要となる。特に外部システムとの連携やクラウド活用など情報技術を有効に活用することも求められ、他の部門との調整などを行うネットワークリーダーが必要となる。
- 経営リーダー
- 施主が住宅関連の事業者の場合、BIMによる成果物は、単なる設計図書ではなく、その情報やデータを有効活用して、クライアント事業者の業務に活かす必要が有るため、BIMデータを事業に活かすためのデータ構造の標準化を事業に適正化させるために事業者の経営判断や販売促進に活かすための経営リーダーが必要になる。事業者にとって建築物、設備システムは、事業者の資産であると同時に経営資源であるため、経営リーダーは、BIMによる設計対し企画段階から参画することが望ましい。
- (2)BIM業務組織化のプロセス
- BIMによる設計業務は、各メンバー部門間において円滑な情報・データ交換が必要になることから、それぞれの部門を有機的に連付ける必要がある。そのためには設計環境を構築するには、段階を経て行う必要がある。
- a.物件条件・ブリーフィングと実務メンバーの選定
- 従来の設備計図書は、設計計算を行いその結果から図面を作成することが最終成果物となるが、BIMによる設備設計の最終成果物は、設計図書を作成する事に留まらず、BIMソフトに構築された様々な情報やデータを後工程において有効に活用することにある。従ってクライアントの物件条件や事業目的に沿った設計データが求められ、そのデータ作成に対応する実務スキルを備えたメンバーの選定が必要になる。また、その物件の趣旨をメンバーにブリーフィングを行う必要がある。
- b.設計実務の組織化と相互関係の構築
- それぞれの設計実務の役割ごとに選定されたメンバーを担当ごとに組織化して、それぞれの組織間の総合関係を構築する。
- c.設計主旨の共有化と各実務メンバーのマッチング
- 相互関係が構築された各組織に対して、物件の事業趣旨に沿った設計主旨を共有化して、各メンバーを実務スキルによってマッチングを行う。
- d. BIMソフトの選定とデータ・書式の標準化及びデータ交換試験
- 各実務メンバーが使用するBIMソフトを選定し、データ構造や各種書式の標準化を行い、テンプレートを作成し配布する。また、IFCデータ及び各BIMソフト間におけるデータ交換試験を行う。
- e.BIM業務のネットワーク化と他工程間との情報共有
- BIMとは、情報のデータを取扱う業務であることから、情報ネットワークを構築すると他工程間との情報共有が効率的になる。BIMによる設計情報は、施工、維持管理、更新への後工程に有効に活用できるために、クラウドや外部データベースとの連携を踏まえた業務環境の検討、構築を行う必要がある。