公益社団法人空気調和・衛生工学会 住宅設備委員会
住宅設備のBIM活用検討小委員会
委員会成果報告書 住宅設備のBIM活用検討
第3章 住宅設備でのBIM活用ガイドラインのあり方
- 3.1 BIM活用ガイドラインについて
- 3.1.3 BIM活用ガイドラインを策定するための方針
- BIMによる業務においては、従来の企画、設計、施工、維持管理、更新というシリアル型の工程からそれぞれの工程を企画当初から横に情報共有を行う必要性が増し、パラレルに業務を進めることが多くなり、BIM素材、業務事業者、工程間に多くの情報・データ共有が必要となる。従って設計、施工、維持管理、更新に渡り、BIMソフト間の共同作業、IFCによるデータ交換、外部データベース設計などにおいて、統一性のとれた業務の進め方が必要となる。また、現在遅れているBIMエンジニアの育成のための仕組み、普及促進のためのマネージメントやマーケティングが必要となる。本BIM活動ガイドラインの制作にあたっては、今後、益々発展していくと予想される情報技術を有効に活用して、設計現場の生産性を向上させる組織的なBIMによる業務、実務を行うための指針となるものを目指す。BIMによる業務は、現在ようやく端緒に就いたばかりであり、今後の発展や変化に柔軟に適応し学習しながら進化し続けることが必要であり「学習する組織(MITピーター・センゲ著)」で示された次の5項目(The Fifth Discipline)の趣旨に従い、ガイドラインとしてフレームワークを示す。
- (1)BIM業務における学習する組織
- a.システム思考
- BIMによる業務は、情報技術を活用して業務に参画するすべての要員、各部門がデータ交換、情報共有、外部参照などのプロセスを通しての共同作業において有機的につながって行われることが理想である。つまり、各業務を構成する各メンバーがシステムとして機能することが必要であり、お互いに補完関係が求められる。この理念によって情報技術を活用した業務環境を構築し各メンバーがその仕組みにアクセスをすることから、業務のシステム化と各メンバーのシステムへの参画意識が求められる。従って、システム思考によって責任をメンバー個人に求めるのではなく、業務参画者の補完関係によって業務を行う思考が必要となる。
- b.メンタルモデル
- BIMモデルによる設計は、多くの場合BIM業務を構成する複数のメンバーにより様々なパート、プロセスを分担することになる。メンタルモデルとは、そのメンバー個々人、チームが関わるBIM業務のプロセスにおいて、どの様に状況を解釈し、業務を行うかを決める前提となるもの(設計趣旨への理解、参画する役割・立場、業務遂行に必要な技術判断等)である。従って、メンバー個々人全員の業務に対する動機付けやインセンティブが必要となるが、それに対応した業務の仕組みが必要となる。
- c.チーム学習
- チーム学習とは、設計に係るすべてのメンバー間の情報共有が必要となることから、全員が統一のとれたBIMに関する学習が必要となる。更に、BIMによる業務は、関連する全ての工程において情報共有する仕組みを目指すため、施工、維持管理を通して学習する必要が生ずる。また、BIMの業務は、今後の変化・発展すると考えられる情報インフラに適正化された業務モデルが必要となり、その変化に合わせた物件単位のチーム学習が必要となる。
- d.自己マスタリー
- BIM業務の環境は、今後益々変化していくと予測できる。その変化に合わせてBIM実務に係る技能を随時更新していく必要がある。
- e.共有ビジョン
- 一つの物件を多くのメンバーで共同作業をする建築物件においては、個々の作業を行うメンバーが、物件共通の設計思想を共有することが必要となる。特にBIMによる設計は、情報技術を活かした業務環境を必要となるため、設計内容、業務スタイルにおいて、自分たちは何を創るのかという共有のビジョンを持つと、業務効率や設計成果物の付加価値の向上を図ることに繋がる。
- (2)業務モデルについて
- 従来、2D図面を基にした設計図書による業務が行われてきた。BIMによる業務は、これまでの業務モデルとは大きく異なり、コンピュータ上に仕様情報を付加した3Dモデルを情報技術の環境の基に行われる。従って、インターネットを活用したクラウド環境における業務モデルを示し、BIMによる業務を円滑に行い、労働生産性の向上を図るためのガイドラインとする。
- (3)仕様書について
- 当小委員会によるガイドラインを有効に活用するには、具体的な仕様書が必要となる。仕様書によるでーか構造の統一化によって、BIMソフト間のオブジェクト区分の定義、BIM素材の仕様書式、統一された外部データベース設計など、設備設計、施工、維持管理、更新の各工程、CFD、熱負荷解析、システム設計等関連業務とのデータ交換に渡り、業務の情報化を行う場合の基準とする。また、BIMによる企画、計画、基本設計、実施設計に渡り必要となる表示表現であるLODに関しても一定の指針を示す。